誰もがほっとする、「地域の止まり木」へ
世界樹カフェ&ギャラリー
今回は東京・新宿区中落合で「五感で楽しむ共創の場」を展開する「世界樹カフェ&ギャラリー」をたずねました。
「世界樹カフェ&ギャラリー」は、スペシャルティコーヒーやハイグレードなコーヒーを中心に、パスタやカレーなどのランチメニュー、ベーグルやケーキといったカフェメニューまで、幅広く手掛けるカフェギャラリーです。
滝乃川学園(知的障がい者福祉施設)、株式会社角川クラフト(※)、そして新宿区による官民連携プロジェクトによって実現しました。
友安製作所工務店では、今回カフェスペースのインテリアコーディネートをご提案。
性別や年齢、障がいの有無にとらわれることなく、さまざまなスタッフたちが働き、こだわりのコーヒーをお客様に注ぐこのカフェが描く未来とは──。
角川クラフトの事業推進を行う社員であり、世界樹カフェ&ギャラリーのスタッフとしても働く大場晃さんに内装づくりの視点からお話を伺いました。
※株式会社KADOKAWAの特例子会社。障がい者が就労する珈琲焙煎・カフェ事業、編集サポート業務のほか、学童事業なども行っている
「世界樹カフェ&ギャラリー」の全面サポートを行う大場さん
今回、店内の家具や装飾のインテリアコーディネートを友安製作所工務店にご依頼いただきました。友安製作所や工務店の存在を知っていただいたきっかけは何だったのでしょうか?
弊社の社長が友安製作所の存在を元々知っていて、友安製作所が手掛けるデザインに関心を寄せていたようです。そこで浅草橋にカフェがあると聞いたので、「一度視察しに行ってくれ」と頼まれました(笑)。私自身もこれからカフェを運営していくにあたり、お店の雰囲気や内装を参考にしたいと考えていたので、良い機会と感じてこっそり見に行ったんです。
浅草橋カフェに足を運んでくださったんですね! 実際に訪れてみて、どんな印象を持ちましたか?
圧倒されました。「内装の雰囲気も良く、人もこんなににぎわっているんだ」と驚きましたね。下町情緒あふれる浅草橋には、実験的な動画配信でも有名な、岡山発祥のとある珈琲店があるんです。そこは大きな実験カウンターに対して席数は少なく、焙煎豆などの棚の奥に厨房を構え、韓国製のドリップマシンでコーヒーを淹れるような「新しさやおもしろさ」を追求するお店。とても素敵なお店なんですが、一方でうちが目指したかったのは、どんな人でもふらっと立ち寄って、地域の人々とスタッフが交流するようなお店。ハンドピックで厳選したコーヒーを、手に取りやすい価格と長居したくなるお店の空間で気軽に飲んでもらいたくて。そのため、友安製作所さんの浅草橋カフェを見てみて、「なんだろう、たくさんのお客様でにぎわっているこの様子は……」と気になりました。はじめはコンセプトが読めなかったのですが、後から考えると、食やサービスは高い品質を守りつつ、空間づくりにもこだわっていたんだと気づいて。素敵だなと思いました。
大場さんが訪れたという、浅草橋にある「友安製作所Café」
コーヒーを扱うカフェを見比べていただいた上で、浅草橋カフェの良さを感じていただいたと……。最終的に、友安製作所工務店にご依頼いただいた決め手は何ですか?
実は、カフェに訪れる前からほぼ決めてはいました。何より社長が「いつかは何かでデザインを頼んでみたい」と、ずっと友安製作所を推していたんです。私自身がカフェに訪れた際も変なギャップは一切感じなかったので、その場でカフェスタッフにお声掛けして、後日改めて工務店の問い合わせフォームから連絡しました。
そこから搬入作業が始まったんですね。工務店スタッフとやり取りした印象は、どうでしたか?
最初は何もなかったお店の内装が、2〜3日間という短い期間で、インテリアによってあっという間に彩られました。実は、内装工事の引き渡しが昨年12月半ばにまで延びてしまいましたが、年明けの1月半ばには新宿区長の視察や竣工式典、地域の方々に来ていただくための“お披露目会”が連日予定されていて。なんとかそれまでにカフェの形をつくる必要がありました。年末年始を挟むので、友安製作所工務店には半月ほどのスピード期間でコーディネートや施工をお願いすることになり……。「無事に終わるのかな」という不安はありましたが、東京工務店のスタッフであるTama(タマ)やGrace(グレース)は優しく対応してくれて、一生懸命動いてくれました。あのときは、ありがとうございました!
収納もできるレジカウンター。表のタイルシールはベルゲンワッフルを使用
お披露目イベントが待っているとなると、何が何でも間に合わせなくちゃという気持ちになりますよね。無事にOPENまで進んでよかったです。空間のコーディネートはどのように進んでいったのでしょうか?
お店のコンセプトや動き方もきちんと決まりきっていない段階でご相談させていただいたので、お店が目指す方向性が明確になるようなコーディネートプランを提案いただきました。こちらが外せなかったのは、「誰もがこの地域社会の一員として、このまちに溶け込める場所」づくり。それに対して、「根を張り、枝を広げる、地域の止まり木」というテーマで、アイアン素材を取り入れた都会的な質感と、店名にもなっている「世界樹」を象徴する木目やグリーンをミックスさせたインテリアデザインを提案してくれたんです。誰もが気兼ねなく立ち寄れるような開放感あふれる空間で、手間暇かけてカップに注がれた上質なコーヒーをいただく──食も空間も両方こだわってお客様に提供することが、地域交流につながると考えてくれました。
随所にフェイクグリーンを置いて明るい店内を演出。奥にある椅子は「カフェ風スタッキングダイニングチェア Coup de Coeur」
具体的には、どんな空間づくりを提案してくれたのでしょうか?
例えば、店内に入るとまず目に付くであろう物販コーナー。ここでは友安製作所に製作してもらった商品棚に、販売しているコーヒー豆をたくさん並べています。でも、不定期でイベントなども考えているので、大きな什器をひとつ固定しているのではなく、移動式かつ同じサイズのものを3つに分けてつくってくれました。普段は存在感がありつつ、ブラックがベースの什器ということもあって分けて配置しても過度に主張せず空間に馴染んでくれます。
3体に分けられている、コーヒー棚
こちらはミニ什器。統一感が出るよう、木目とアイアン製でまとめています
他に、大場さんがお気に入りのところはありますか?
複数のお客様が来店されたときにでも対応できる、4人掛けのテーブルです。タイルシールが埋め込まれていたり、木の端材があらゆる角度ではめ込まれていたりと、一枚一枚の天板にユーモアがありつつ、たくさんのお客様が来たときにはフィットするようにつなぎ合わせられる点です。この間は8名でコーヒーを飲みに来られたお客様がいらしたので、そのときも助かりましたよ。うちは、例えば少数で来てほしいなど、興味を持って来店してくださるお客様に制限は一切しません。誰がどんな人と来ても良いと思っているので、開放感のあるこのお店で、のびのびとコーヒーを楽しんでもらえたらと思っています。そのため、レイアウトが変更しやすいインテリアをセレクトしたり、つくってくれたりすることは大変ありがたいです。
ひとつひとつ天板デザインが異なるテーブル
OPENしてから数ヶ月が経ちますが、お客様やスタッフのみなさんの反応はいかがでしょうか?
お客様からは「綺麗だね!」と嬉しいお声を掛けていただきます。アイアンと木目を基調としたデザインが好評で、店内を見渡してインテリアに興味を持ってくださる方も多いんですよ。また、外の空気を感じながらゆったり過ごせるように、一部テラス席も用意してもらいました。天気の良い日には目の前のグリーンを眺めながらコーヒーを楽しむお客様の姿が見えて、こちらも微笑ましい気持ちになります。そして、入り口に配置した移動式の商品棚も大活躍しています。コーヒー豆が自然と目に留まる見やすいレイアウトになっているおかげか、カフェを利用した後に「家でも飲みたい」と購入して帰られる方が多いんです。素敵な空間のデザインが、お店のコンセプトを体現するだけでなく、お客様の満足度にもしっかりとつながっていると実感しています。
テラス席の目の前にはグリーンが広がっており、心地よい空気を感じられます。椅子は「ガーデンチェア kai」
スタッフは、他店舗に比べて「掃除がしやすくなった」と喜んでいます。今って見た目ばかりにこだわってしまって実用性が足りていなかったり、扱いづらいものが増えていたりすると思うのですが、取り入れてくださったインテリアが移動式のものが多いため、いつでも隅々まで綺麗に掃除ができます。働きやすい環境になりましたね。
フェイクグリーンであしらっている間仕切りも移動式です
最後に、この先に目指したいと考えている未来はありますか?
これまで蓄積してきたコーヒーのノウハウがあるので、まずはこのお店やここのコーヒーをきっかけに、地域の方々とスタッフが自然と交流する時間を広げていきたいと考えています。カフェでは今後もメニューを増やし、イベントを開催することにより、もっといろんなお客様が気軽に来店できるように計画をしています。そして、「世界樹」と店名に入っている通り、いつかはこの新宿区からさらに根をはり枝葉を広げ、東京、日本、世界へと進化を遂げていけたら。障がい者が自立的に、安定的に働ける環境をさまざまな場所で築き上げていきたいです。
撮影日も、店内は一人やご夫婦など、途切れることなく訪れるお客様で賑わっていました。
「スタッフは全員障がい者手帳を持っていますが、福祉の枠にとらわれず、やる気のあるプロとして見ています。純粋に最高の一杯を味わってほしい」と大場さん。
その言葉通り、店内には誇りを持って働くスタッフとお客様の笑顔があふれています。
友安製作所工務店が手掛けた、アイアンと木目が温かい「地域の止まり木」のような空間。
「世界樹カフェ&ギャラリー」は、これからも人々が集い、ひと休みできる場所としてまちに根を張っていくでしょう。
ぜひ一度、最高の一杯を味わいに足を運んでみてください。
世界樹カフェ&ギャラリー 自家焙煎の本格的なコーヒーを、なんと一杯300円で提供しているカフェギャラリー。他にもパスタやカレーなどのランチメニュー、ベーグルやスイーツなどのカフェメニューと、展開を広げています。ギャラリースペースでは障がいのあるアーティストの作品を展示。エンターテイメントの枠を超え、作品を通して次世代の才能を発信しています。 世界樹カフェ&ギャラリー