大阪・関西万博の“実証実験の場”として
2024年10月、アリオ八尾の2階オレンジコート前に誕生した中小企業スタートアップ支援施設、OPEN FACTORY CITY YAO『コ・クリエーションスペース ぬか床』。
もともとは地元FM局のブースだったというこのスペースをリノベーションするにあたり、友安製作所工務店はデザインプロデュースを担当させていただきました。
「大阪・関西万博」の実証実験の場でもある同スペースの意義や、完成後の様子などを八尾市の担当者にお聞きしました。
まずは、「コ・クリエーションスペース ぬか床」について教えてください。ちょっとユニークな名前ですよね?
この施設は、中小企業や起業家の皆さんのイノベーションや共創(co-create)の場として、2024年10月にスタートしました。「ぬか床」というユニークなキーワードは、八尾市のまちづくりの概念「ぬか床モデル」からつながったものです。皆さん、漬物の「ぬか床」を想像してみてください。いろんな野菜が糠(ぬか)の中に一緒に入って発酵し、定期的にゆっくりとかき混ぜなければカビが生えてしまいますよね。この野菜たちが地域の中小企業や起業家の皆さんであり、ゆっくりかき混ぜることで、新しい発想や問題の解が生まれ、共創につながっていくという考えが「ぬか床モデル」。このスペースは、そのぬか床モデルの実践の場というわけです。
なるほど!では、このスペースの機能としてはどういったものがあるのでしょうか?
まず表側のショールームは、大阪・関西万博(以下、万博)のPRブースも兼ねた展示スペースになっています。現在は、大阪ヘルスケアパビリオンへの出展(※八尾市は2025/09/16-22まで出展)が決定している八尾市企業13社の自慢の製品が展示されています。いわば、万博の実証実験の場ですね。この展示のテーマは、“さわる展示”。表から見るだけでなく、ぬか床のスペースに入っていただき、実際に製品を触って、その技術や魅力を体感してほしいと思っています。
万博に出展する13社の製品を展示した「さわる展示」
大阪ヘルスケアパビリオンに出展する八尾市のブーステーマ「とにかくさわる博」につながっているんですね。
そうです! ですから、ぜひ製品に触れてほしいと思っています。また、ぬか床にはチャレンジショップの機能も設けています。中小企業や個人事業主の皆さんが、手軽にお試しでショップを運営できるスペースです。例えば、「新製品ができたから、一度消費者の反応を見てみたい」「起業するにあたって、まずは小規模な形で商品を販売してみたい」など。さらに、ドロップイン型のコワーキングスペースも併設し、打ち合わせや事務作業などに使っていただけます。こちらも事前申請さえしてもらえば、基本的に誰でも使うことができます。
リノベーションにあたって、友安製作所工務店に求めたコンセプトはどのようなものでしたか?
このスペースのコンセプトでもある、イノベーションや共創が生まれる空間を目指すため、友安製作所工務店(以下、友安)さんには、「人の集まる空間」を大切にプロデュースしてもらいました。また、多種多様な店舗が並ぶ商業施設の中で、目を惹くことも重要なポイント。良い意味で異彩を放つような空間にしてほしいとリクエストしました。
具体的にデザインや機能で要望したことはありますか?
一つは、今後いろいろなイベントを開催したいと考えていますので、可変的に棚を移動できるようにしてほしいということ。そこで友安さんには、チャレンジショップの棚をキャスター付きの可動棚として製作していただきました。また、入口からも目に入りやすい備え付けのキッチンが、いかにも昭和のキッチンといった古いタイプだったため、おしゃれにしたいとお願いしました。
キャスター付きの可動棚
新しくなったスタイリッシュなキッチン
実際にスペースが完成して、率直な感想を教えてください。
このスペースは、駐車場からアリオ八尾の2階に上がった時、真っ先に目に入る位置にあります。スペースが完成して最初にそれを目にしたときは、お世辞抜きで「カッコイイ!」と心奪われるほど目を惹きました。各扉やキッチンに付けられたロゴなど、細かなところも凝ったデザインで、それらの集大成が目を奪う存在になっているんだろうなと感じました。まさに「神は細部に宿る」ですね。私たちが求めていたものを予想以上の完成度で具現化していただいたと思います。
八尾市の担当者さん
ありがとうございます! 利用者さんたちの反応はいかがですか?
表を通って、「こんなカッコイイところができたんだ!」と驚く方が多いですね。それがきっかけでスペースの中にも入っていただき、さらに興味を持つ方もいらっしゃいます。平日でも20人程足を運んでくれることもあり、アリオ八尾の中でも特別な存在として目を惹いているようです。
右の扉はコワーキングスペース
一般の方にも注目してもらえたようで、私たちも嬉しいです。今後はこのスペースをどんなふうに利用していただきたいと考えていますか?
ぬか床を通して、中小企業さんや起業家さん同士のつながりができることはもちろん、ここに来た人が八尾の製品を手に取り、それがきっかけで万博にも足を運んでくれたり。逆に万博で八尾市のブースに来てくれた方が、それをきっかけで八尾に興味を持って、ぬか床に来てくれたり。国内外の多くの人が、このぬか床を起点にかかわることができるような場所に育ってほしいですね。
この「コ・クリエーションスペースぬか床」が、国内外の人々で賑わい、八尾市のPRにつながることを願っています。
各扉のプレートの文字は手の込んだ切文字
OPEN FACTORY CITY YAO「コ・クリエーションスペースぬか床」
2024年10月、八尾市の大型ショッピングモール・アリオ八尾2階にオープンした中小企業スタートアップ支援施設。大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンへ向けた実証実験の場として活用されている他、チャレンジショップや一時利用可能なコワーキングスペースも併設されています。一般の方でも自由に立ち寄っていただき、展示物を「さわって体感する」ことも可能です。今後、様々なイベントも開催予定。
※ショップや展示などのスペースを利用するためには事前申請が必要です。
2025年日本国際博覧会
大阪ヘルスケアパビリオン
2025年9月16日(火)〜22日(月) 八尾市リボーンチャレンジ「まちこうばのエンターテイメント! ~みせるばやおモデル~」
出展企業(13社) 株式会社アーテック / アベル株式会社 / 株式会社ウエダ美粧堂 / カネエム工業株式会社 / 木村石鹸工業株式会社 / 有限会社大一創芸 / 株式会社友安製作所 / 錦城護謨株式会社 / 藤田金属株式会社 / 株式会社マックス / 株式会社ミナミダ / 株式会社八尾金網製作所 / ヤマトエスロン株式会社