芸術と文化、地域と出会える場所へ
2022年8月にリニューアルオープンした八尾市『八尾市文化会館プリズムホール』。
その情報・交流コーナーを、公募型プロポーザルによって友安製作所がプロデュースさせていただきました。
「やおうえるかむガーデン」と名付けられたこのスペースについて、そこに込めた想いやオープン後の様子など、八尾市と指定管理者(公財)八尾市文化振興事業団(※以下、事業団)の方々にお聞きしました。
まずは、プリズムホールのリニューアルの目的を教えてください。
八尾市 プリズムホールが開館したのは昭和63年。約35年が経過し、老朽化への対応が必要となっていました。具体的には、ホールをより耐震性の強い天井に改修すること、座席や音響・舞台装置などを新しくすることなど。また、こういった老朽化への対応や安全性の向上といった理由だけでなく、近鉄八尾駅に近い公共施設が、「市民の賑わいの拠点」となるようにといった目的がありました。その拠点として、受付と情報・交流コーナーがキーにならないかと考え、公募型プロポーザルを実施しました。
八尾市と事業団の皆さん
八尾市としては、リニューアルに際してどのような要望を挙げられていたのでしょうか?
八尾市 レイアウトコンセプトとしては、リニューアル後のプリズムホールの顔にふさわしい空間であること。誰もが訪れたくなるような魅力あふれる空間。来館者にとって快適で機能的、安全面に配慮した空間。さらにユニバーサルデザインであること。そして、当時はまだコロナ禍ということもあり、その対策も要望に入れていました。要望としては抽象的なものなので、予算などの制約の中で、提案者のアイデアや工夫に期待するところが大きかったですね。
プロポーザルの選定の中で、友安製作所に決定された理由はどのようなものだと思われますか?
八尾市 もちろん、選定委員会が定めたしっかりとした基準や仕様で決まったものですが、私たち事務局が立ち会った感想としてお伝えします。ひとつは、「八尾らしさ」を出していたところが魅力だったのだと思います。例えば、象徴的な「YAO」の文字を象った大きなアイアン看板。そして、八尾の企業さんが手掛けた製品の数々。カフェのような空間のイメージも広がって、プレゼンテーションを聞いていると、ワクワクするようなお話でしたね。「にぎわい創出」というテーマで各社に提案をいただいて、八尾という場所を一番に考えてくれていたのが友安製作所さんだったと思います。
ありがとうございます。「芸術と文化に出会える」というのがプリズムホールのコンセプトなので、そこにさらに八尾らしい要素を取り入れて「地域」をプラスし、「芸術と文化、地域と出会える場所」というコンセプトで提案しました。
八尾市 改めて、最初に提案してもらった図面を見ても、結果としてベースのデザインはほとんど変更なく実現されていますよね。可動式のパーテーションやフレキシブルに使えるテーブル、おしゃれなプロジェクター収納、そして大容量の可動式チラシ棚など、既製品では難しい要望をたくさん伝えて、それをほぼ実現してもらいました。
今回は友安製作所でしかつくれない空間として、既製品を一切使わず、すべて自社内や八尾市の企業とコラボしたオリジナル製品を使ってつくり上げています。特に思い入れのある要望や気に入っている部分はどこになりますか?
八尾市 本当に様々な要望を出させてもらったのですが、その中でも、このスペースで必須アイテムの一つが、「チラシ置き場」です。情報・交流コーナーという性質上、250種以上のチラシを置く必要があり、それを実現してくれたのがオリジナルでつくってもらった「木製キャスター付きジャバラチラシ棚」です。 事業団 棚の1マス1マスにチラシを置くための背板とアクリル板を付けてもらい、見やすい角度も追求してもらいました。キャスターも付いているので、自由に移動もできます。おかげで、このチラシ棚になってからは、「チラシを置きたい」という人が、さらに増えましたね。
移動もできるオリジナルのチラシ棚
八尾市 手続きなどを行うカウンターにも、いろいろな工夫をしてもらいました。デザインだけじゃなく、車いすの人も使いやすい形状で、スタッフ側ではパソコンを使うためコードを通せるようにし、後ろに収納棚を置いて動線を良くしたいなど。本当にいろいろ細かな要望をお伝えして、実現してもらいましたね。
ヘキサゴン型の分解できるテーブルと受付カウンター
「YAO」のアイアン看板に関してはどうでしょうか?
八尾市 「YAO」の看板は、とてもいいランドマークになっていると思います。今回リニューアルと言っても、ホールなどは耐震性や安全面の向上であって、建物に入ったときに見た目の変化がわかりにくくなっています。そんなときに上を見上げると、この「YAO」の看板があるわけです。インパクトもありますし、リニューアルの象徴になっていますよね。西日が当たった時の「YAO」の影も素敵なんですよ。
「YAO」の看板がランドマークに
利用者の皆さんはどのような反応ですか?
事業団 リニューアル前から利用されていた皆さんは、この空間を見て「わあぁ!ここどこ!?」という驚きの声を上げてくれます。若い方の利用もかなり増えて、勉強に使っている学生さんや、リモートワークに使っている方もいらっしゃいます。小学生のグループが、誕生日会の打ち合わせをしている微笑ましい光景も見かけました。全体的に利用者さんが増えて、リピーターさんも多いことが嬉しいですね。利用者さんに好評なのは、ぞうさんのソファ。お子さんから大人まで、「ぞうさんで待ち合わせね!」と言って人気スポットになっています。それにこの天井から飾られているフェイクグリーンに驚かれる方も多いですね。「これ本物!?」という話題から、「実は八尾市の友安製作所さんがプロデュースしてくれて」と会話のきっかけになり、利用者さんとコミュニケーションを取ることが増えました。
待ち合わせの目印になっているソファコーナー
ぞうさんのソファは、友安製作所で扱っているカーテン生地でつくったオリジナルです。多くの方にご利用いただいているようで、私たちも嬉しいです。
八尾市 このリニューアルの期間、私たちは並行して「八尾市芸術文化基本条例」をつくっていました。国を挙げて、様々な分野とアートを融合していこうという流れの中で、友安製作所さんはモノづくり企業でありながら、アートとの親和性が高い存在。具体的な友安製作所さんの提案を見せてもらって、モノづくりとアート・デザインの融合といったイメージが付きやすかったですね。プロデュースしてもらったのは、この空間ですが、結果的に八尾の芸術文化を考えるうえで、とても刺激になるプロジェクトでした。
私たちも初めての公共事業でしたので試行錯誤のところはありましたが、そう言っていただけると大変励みになります。
八尾市 友安製作所さんは、上っ面だけでなく、一つひとつを妥協せずに真剣に取り組んでくれる姿勢があったからこそ、私たちもそういった刺激を感じることができたんだと思いますよ。
ありがとうございます! 今後は八尾市民の皆さんに、この情報・交流コーナーをどのように利用していただきたいと考えていますか?
事業団 新しくなったこのスペースは、これまで堅苦しいイメージだった「市営の施設」とは、一線を画すような親しみやすくておしゃれな空間。今まで利用して頂いた方はもちろん、新しい感覚を持つ方にもたくさん利用していただきたいですね。そして、その延長線上で他のスペースを利用するきっかけになればと期待しています。
この「やおうえるかむガーデン(情報・交流コーナー)」が、八尾市の「芸術と文化、地域と出会える場所」になることを願っています。
八尾市文化会館プリズムホール 1988年、八尾市民の芸術文化活動の拠点として、さらには文化的まちづくりの核となる施設としてオープンしました。大・小ホール、レセプションホール、会議室、練習室、展示室、カフェレストランなど様々な施設を有しています。2022年のリニューアルでは、大・小ホールの座席や、舞台機構、音響照明機器、各階のお手洗い、ベビールームなども新しくなり、誰にとっても安心で、やさしい施設へとブラッシュアップしました。 八尾市文化会館プリズムホール