「中身」も変える工場リノベーション
工場とは思えないルックスが八尾の工場地帯で異彩を放つ藤田金属さん。友安製作所工務店が工場と事務所のリノベーションを手掛けた事例です。見た目だけでなく、会社の「中身」の変化やファン獲得にもつながったリノベ―ションについて、3代目社長の藤田盛一郎氏にお話をお聞きしました。
友安製作所
代表取締役社長友安 啓則(Boss)
藤田金属
代表取締役社長藤田盛一郎さん
Boss
友安製作所工務店で、ショールーム兼ショップを併設した“オープンファクトリー”と事務所をリノベーションされた藤田金属さんですが、そもそもリノベーションしようと思ったきっかけはどんなことだったのでしょう?
実を言うと以前の事務所は、本当に昔の木造校舎のような古さ。いろんな不具合があるし、仕事をしていても、ずっと落ち着かない感じだったんです。そこで「働く環境って本当に大事だな」と実感しました。さらに、友安製作所からオープンファクトリー化の重要性もお聞きして、70周年に向けてオープンにできるオシャレな工場と事務所を作ろうと思ったんです。
藤田社長
リノベーション前の外見
リノベーション前の工場
リノベーション後の外見
リノベーション後の工場
Boss
確かに職場環境はモチベーションにつながりますよね。では、実際のリノベーションを友安製作所工務店に依頼しようと考えた「決め手」は何だったのでしょうか?
決め手は、「デザイン性」と「価格」です。友安製作所の事務所を見学して、同じ八尾の事務所がリアルにオシャレな空間になっていることを体感できたし、実際に使われている床材や壁材、塗料などを見ることもできました。扱っているアイテム数も多いし、何より内装デザインをお任せでトータルコーディネートしてくれる。それなのに、相見積もりを取った他社よりもリーズナブル(笑)。デザイン性が高ければ価格が上がるのが常だと思いますが、どちらも満足のいく答えを出していただいたことが決め手でした。
藤田社長
Boss
弊社は専属のデザイナーがトータルコーディネートできますし、取り扱うインテリアアイテムは35,000点以上。モノづくり企業として、工場直営で家具や建具などをフルオーダーすることもできます。それらがすべて自社でまかなえることで価格を抑えることができるんです。特に藤田社長は、デザインに関してこだわりをお持ちでしたよね?
そうですね。デザインでこだわったのが「製造業っぽくない」ということ。非日常のような空間をつくってほしくて、オシャレなカフェや美容室の写真を撮っては、デザイナーのSammyさんに送っていました(笑)。それに対してSammyさんは、いろいろヒアリングしながら、すぐに「こんな感じどうですか?」ってデザイン提案してくれたんです。それが僕の想いとギャップもなくて、さらに3Dのデザインソフトで見せてくれたことによって、イメージもしやすくて凄くスムーズに進みました。
藤田社長
リノベーション後のオフィス
Boss
Sammyも工場のカッコ良さは残しつつ、藤田社長の想いを反映させたデザインをつくりたいと取り組んでいました。それに藤田社長からの希望で、ショールームの床にロゴを描きたいということで、これはうちで一番腕のいい職人さんに頼みました。
ロゴが描かれたショールームの床
うちの床は巨大な機械を置いていたからガタガタなんですよ。そこに凄くキレイにロゴを付けてくれました。他の部分もそのガタガタした風合いを残しながら、味のある床に仕上げてくれましたね。
藤田社長
うちの床は巨大な機械を置いていたからガタガタなんですよ。そこに凄くキレイにロゴを付けてくれました。他の部分もそのガタガタした風合いを残しながら、味のある床に仕上げてくれましたね。
藤田社長
ロゴが描かれたショールームの床
Boss
ショールームのヘリンボーンの床材やキッチンにもこだわりがありましたよね。
そうなんです!某自動車メーカーのCMで見た床を再現してほしくてお願いしました。本当に忠実に再現してくれて驚いたくらいです。キッチンは、実際にうちのフライパンを使えるようにとショールームに備え付けてもらったんですが、友安製作所さんのオリジナルキッチン「Irosh」を見て即決しましたね(笑)。
藤田社長
キッチンが備え付けられたショールーム
Boss
施工中は「工場の操業を止められない」という製造業ならではの事情もありましたね。
工場の壁には大きなロゴを付けてもらったんですが、その施工で工場を止めるわけにはいかない。だから休日を利用して、複雑な足場を組んで施工してもらいましたよね。私たち製造業は、操業を止めることが売り上げに直結するので、「操業を止めない」ということは工場のリノベーションではとても重要なことだと思いますよ。
藤田社長
Boss
リノベ―ション前に事務所を訪問したとき、藤田社長が「汚いところですみません…」って先に謝っていらしたのを覚えています。それが今は、誰が訪ねてきても「オシャレですね!」って、感動するような場所になりましたよね。
おしゃれにデザインされたダンボール
皆さんにそう言ってもらえると、働いている社員たちも「私たちってオシャレなところで働いているんだ!」というモチベーションもプライドもできてきますよね。意識が変わると、工場で使う段ボールもキレイにしたくて、統一したものをオーダーしたくらいです。今では自信を持って社内を案内できますよ。
藤田社長
皆さんにそう言ってもらえると、働いている社員たちも「私たちってオシャレなところで働いているんだ!」というモチベーションもプライドもできてきますよね。意識が変わると、工場で使う段ボールもキレイにしたくて、統一したものをオーダーしたくらいです。今では自信を持って社内を案内できますよ。
藤田社長
おしゃれにデザインされたダンボール
Boss
なるほど。他にもリノベーションによって良い影響があったものはありますか?
一番大きな影響があったのは、「人材採用」ですね。応募数が10倍近くに上がり、書類選考も必要になりました。必然的に人材の質も上がり、優秀な人材を採用することができました。既存の社員も、ショールームがあると、自分が作った製品が目の前で売れていくので、モチベーションはかなり上がっているようです。
藤田社長
Boss
10倍は凄いですね! では、外に向けての営業力などは変化がありましたか?
ありましたね! 以前はバイヤーさんが買い付けに来て、向こうが「売ってやったるで」というスタンスだったけど、今は「買わせてほしい」っていうお客さんに変わりました。ショップにくるお客さんも、HPのトップにオシャレな社屋の写真があって、さらにオシャレなショップまであるとなると、わざわざ足を運ぶ理由ができるようです。
藤田社長
Boss
それは私たちも嬉しいです!ファンも増えたということですね。
その実感はSNSを見ると感じることができますね。ショールームが「写真が撮りたくなる場所」に変わったので、来てくれたお客さんが写真を撮って「# 藤田金属」でタグ付けしてくれる人が増えました。これは、オシャレなショールームがなければ確実に実現できなかったこと。 ショールームに来たお客さんの中には、すでに2種類のフライパンを持っているのに、さらにその場で3つ購入された方もいらっしゃって、本当に嬉しかったですね! コアなファンも増え、直接お客さんの話を聞けることが次のモノづくりにもつながっています。
藤田社長
Boss
リノベーションによって、空間だけでなく働く人の意識や対外的なアピールといった、中身の部分にも良い影響があったということですね。私たちも、そういったお客様をどんどん増やしていきたいと思っています。ありがとうございました。
藤田金属 1951年創業、八尾市に移って約50年。フライパンをはじめ、鍋やヤカンなど金属製品を数多く作り続けています。オリジナル商品として、「フライパン物語」「フライパンジュウ」などを開発。独創性あふれるモノづくりで国内外の数々の賞を受賞。 藤田金属株式会社